狭間の世界

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「ただいまぁ」 「おかえりぃー」  脱ぎかけた靴を履きなおし、扉の手をかける。 「お母さんはまだ帰ってないよ。それにしてもこの結界は甘いねぇー。兄は何を考えているんだか」 「おい! お前男か女かどっちだよ!」 「あぁ、自己紹介した方がいいかな? 僕はルイ。アギルの弟だよ。妹のミラはアギルの家の方に居るはずだけど」 「なんで……」  問いかけようと口をあいた瞬間、いつの間にか口を塞がれ首にひやりとした感触がし、動くに動けない。 「こんな事したくないんだけど、一緒に来てもらうよ」  気がつけば椅子に体を縛られ、手と足も拘束されている。  しかもロープでなんて、何かのドラマの観すぎか? と思うような方法で。ただ違うのは、黒い服……マントを着た者たちがうろうろとしていて、分かるのはここがどこかの洞窟の中だという事だけ。口は塞がれていないものの、目の前には木で出来た大きなテーブルに、山盛りのパンが大量に積まれていて、それを貪るように食べる黒マント達。  声を出すどころか、あれは食えるのか? とマジマジ見てしまい違う意味で声が出ない。 「あ、起きた?」 「何処だよここ」 「君はどこまで知っているのかは分からないけど、死神界・人間界・天界とあることは知っているよね?」 「それが?」 「君は死神界と人間界の間に何があると思う?」  知るか! と言いたいが、体がかなり痛い。連れて来られてからそんなに時間が経っているのか、アギル達は自分が居ない事をバッジで分かっていると思うが、探してくれているのかちょっと不安。何も話したくなくてホルンとマルコ、そしてリヒトに教わった事を思い出しながら問いかけには答えない。 「君、意外と頑固? それは損だよ」 「……」 「君がここに来てから二日。お腹すいたろう? パン食べる?」 「……」 「まぁいいよ。お腹すいたら言ってくれたらパンあげるから」  無視しながらも手のロープが切れないかどうか、集中してみるものの、腕にも足にも全く反応がない。 仕方ないと目を瞑って周りの音だけ聞いていると、たまに声が聞こえてくるのでミラが帰って来たのかもしれない。
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