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仕方ないと目を瞑って周りの音だけ聞いていると、たまに声が聞こえてくるのでミラが帰って来たのかもしれない。
眠っていきそうになったが、今寝たらだめだと思い手首と足をごそごそと動かし、少しでも緩むようにしているのだが、黒マント達は興味がないのかこちらを見る事もなくただ通過していくだけ。
それにしてもここは何処なんだろう? 人間界と死神界の間とか言っていたけど、そんなことは話にも出ていなかったので何も知らない。でも呼吸も普通に出来るし、時間は分からないがたまにパンを食べに来るので夕方頃なのだろうと思い周りを観察する。
ガシャン——
何かが割れる音がして周りが騒がしくなったが、黒マントも居なくなり一人放置される。
「悠一」
「マルコさん……」
ナイフでロープを切ってもらい立ち上がるが、少し立ち眩みがする。
「すまん少し我慢してくれ」
体が浮いたと思ったら、ひょいっと肩に担がれ建物内から出る。
「何だここ……空の色も変だし、周りに何もないし」
「いきなり気配が消えてどこからも反応がないと、探すのに時間が掛かってしまった。ここは死神界と人間界の間。通称狭間(はざま)と呼ばれる場所で、本来生物はここでは生きられないとされているんだが、本当の所は分かっていないし、来ることもなかなかできない場所なんだ。空間の歪みを見つけてやっと来れたのはいいが、体の感覚は麻痺しているものと思っていい。すぐに出るぞ」
「でも、向こうから声が……」
「みんなが殲滅しているだけだ。私は悠一を早く人間界に連れ帰るという指示を受けている」
「マルコさん、降ろして」
ジタバタと暴れ何とか下ろしてもらい、音のする方に歩いて行く。
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