#2 懐かしいあの味

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「顔に出てますよー。さて、戻りましょうか」 着いた場所は隠し部屋。 どこにどう隠し持ったのか、キッチンに行き、集めた食材を置いていく。 「ちょっとお使いに行ってきてください。角のパン屋さん、あそこ美味しいんですよぉぉ、今ならまだ、限定の柔らかフランスパンがあると思うので買ってきてください」とお金を渡される。 焼かないのかよ……と思わないわけでもなかったが、まだ辞めた訳では無いので、お金を受け取りパン屋まで歩いていく。 「めっちゃ混んでるし……」 店内から出てくる人のほとんどがフランスパンを持っているので、あれが言っていたやつか……と思い、三十分並んでやでと一本購入。 パンを抱えて街中を歩く俺。 すれ違う人の視線が痛い! 「ただいま」 「おかえりなさいー。今から煮込むところですから、座っててください」 そう言ってヤギの乳をドバドバと鍋に入れ、ローリエの葉を上に置いて、鼻歌を歌いながら木べらで混ぜる死神…… 「これはですねぇ、弱火でじっくりと、コトコトと煮込むんですが、時間をかければかけるほど、あぁ、もうヨダレがでそうです」 「ヨダレいれるなよ?」 「もちろんですともー」 ふんふんふんと機嫌が良さそうなので、近くにあった雑誌を見ると、死神通信Vol.2となっていた。 死神にも週刊誌あるのか…… パラッとページをめくっていくと、『男性人気死神TOP10』と書いてある三位にアギトの写真。 「うそ!」 「んんん?ああ、これですか。残念ながら三位でしたが、三位の特典の温泉旅行券を貰いました」 「死神温泉とか?」 「ありますよ?他にも、地獄温泉、天国温泉、黄泉温泉に、人間界各地の温泉施設で使えます。一緒に行きますー?」 「絶対にヤダ」
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