慎二と神様

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かなり古く、ビニールから取り出していたので濡れてページがめくれないということも無いが、何故こんな所に入れてあったのだろう?という疑問がある。 「慎二……」 「月さん、うちの両親に、神様と友達になったんだよって紹介をしたかったのもあるけど、月さんが神様だって知ってから、この本読めるかなって。俺にはなんて書いてあるのか分からないんだ」 「日本語でしょう?」とページを開くと、確かに慎二に読めるものでは無い。 「これはいつからあるものなのですか?」 「分からない。俺が中学の時に事故で亡くなって、お葬式が終わったあとに警察の人から返してもらった荷物の中にこれがあったんだ。おじさんも知らないって言うし。その時俺、まだ子供だったから事故の内容は成人してから聞いたんだけど……」 「それでおじさんの家に住んでいたのですね」 「元々、あの旅館をやってたのは俺の両親で、おじさんは今俺が住んでるところに居て普通のサラリーマンしてたんだけど、旅館をおじさんが継ぐとか言い出して。祖父母が亡くなるまで二年くらいかな。おじさんが旅館、おばさんはマンションで世話してくれてたんだけど、大学をそのまま今のところに決めたら、そのまま住んでていいっておばさんも旅館の方に行くことになって。で、今なんだけど、ずっとこの本気になってたんだよね」 自分からしたらまだまだ子供なのに、そのような過去があったにも関わらず、それでも明るく気丈なところは、ご両親が大切に育ててくれていたから、そして叔父夫婦からも沢山愛されてきたからなのだろう。
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