冊子と日常

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神社を後にし、風と公園に行き、ブランコに腰かけて誰もいないので風を離す。 離したとしても近くしか歩かないし、走ってどこかに行くこともないので自由にさせているが、自分の知識など何かの役に立つのだろうか。 書物を読み、時折筆をとって覚書程度に書付などをしていただけで、たまに家に来る神達の話を聞いては知っていることを少し話す程度だったと言うのに。 「ですが、預かった以上、読んでみるしかないですよね。辞書が早く届くと良いのですが」 帰りましょうと風を抱っこして家に帰り、朝お風呂に入ったので今夜はいいかと、夕食の支度をする。 テーブルにきんぴら、小松菜のおひたし、焼き鮭、豆腐の味噌汁とご飯を並べ、風と一緒にいただきます。 「旅館のご飯が豪華でしたので、いつもの食事は寂しく見えますね。盛り付け方や器で変わるでしょうか……とは言っても、あまり人が来ないので食器を増やしてもとも思いますし」 「わん」 「どうしました?もうご馳走様ですか?」 「わうわう!」 窓の方を見て鳴いているので、カーテンを開けると黒い影。 お化けというのは苦手なのですが…… ガラッと窓を開けると、三本足のカラス。 「八咫烏、背中のもの……あっ、重かったですね。すぐ下ろします」 お使いで辞書を持って来てくれたのだろう。 少し待っていて欲しいと中を確認して中に入っていた手紙を読む。 すぐに返事を書いて「お使いご苦労様です」とせんべいと封筒を背中に括っていると、「3日後にまた取りに来ます」と飛んで行った。 「風、先程のは、八咫烏と言いまして、本来でしたら導きの烏なのです。ですけど、私も強く姉上に懇願したのでお使いに来てくれたのでしょう。三日後はもっと良いものを持たせてあげないと行けませんね」 風に話しながら食べ終わった食器を洗い、早速冊子を開く。
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