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「ねぇ 今好きな人いる?」
俺は思い切って彼女に聞いた。
白百合のように美しい肌をした一ノ瀬里帆は、僕の質問に目を丸くしながらも、恥ずかしそうに頷く。屋上を吹き抜ける秋風が、彼女のスカートをふわりと撫でた。
予想は充分出来ていたはずだった。
だけど 何かが胸の奥でドクリと音を立てる。
『お前 一ノ瀬のこと気になってんのー?』
『ずっと目で追いやがって変態だなーおいっ』
『えぇっ!?ちょっとやめてよー 遠野くん!リホは私達のアイドルなんだからっ!』
『絶対彼氏持ちだから諦めろって』
こんな風にからかわれるのは毎度だった。
適当にその場をはぐらかしながら、俺はいつの日か四六時中 彼女を気になっていた。
「ふーん 気になるなら聞いてみたら?」
幼馴染の田村人志は、馬鹿に騒ぐ集団から一歩離れた場所で俺に言った。
「・・・でも・・・後悔する気がして・・・」
「いや後悔も何も、やらないでクヨクヨするよりいいだろっ。心配すんなって!振られたら俺が一晩中一緒に泣いてやるって!」
「絶対やだ(笑)」
組まれた肩を振りほどこうとしながら、俺は確かに背中を押された。
このまま隠していては伝えられない。
募っていた気持ちを里帆に伝えようと決心した。
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