彼女は100万円あげたいらしい

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 *  その日の昼休みに、マユはクラスメイトの男子をどこかへと連れ出した。  まさか告白? でも、あれはちょっと丸顔でちょっと性格が悪いヤマグチだ。あんな奴お嬢様にはふさわしくない。  心配になったあたしはコソコソと2人を尾行した。別に特別仲がいい訳ではないが、あたしと彼女は小学校からの古い付き合いだし、何だかんだで気になってしまうのだ。  2人は人気のない廊下で立ち止まった。近くのコーナーに隠れて見守るあたし、プラスもう1人。この男も同じ2年2組で通称お嬢様のお付きの人。お主いたのか。 「ヤマグチ」  来た。 「100万円あげようか?」  ……はい来たー。  あたしの隣でお付きの彼は大きくうなずいたが、言われた本人はすごい顔をした。まるでにらめっこの練習中みたいな。 「はあ? 何言ってんの?」 「欲しいものがあるって言ってたから、ちょうどいいと思って」 「金持ち自慢かよお前。いらねーよ」  短気な声が静かな廊下によく響いた。  かわいそうなヤマグチ、とあたしは人生で初めて彼を憐れんだ。お嬢様にこんなところに連れて来られて多少期待しただろうに。  マユが何を考えているのかはちっとも分からなかったけど、あたしの0.6の視力では残念そうに見えた。  
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