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「リサ。100万円あげる」
高校の女子トイレでいきなりそんなことを言われた。この同級生が変なことを言うのは、ラベンダーの消臭剤が紫色なことくらいよくあるので、あたしは驚かなかった。
「マジ? くれるの?」
「うん。後で口座番号教えてね」
あれ?
「待ってマユ。心理テストか何かじゃなかったの?」
「本当にあげる話に決まってるじゃない」
マユは目鼻立ちのはっきりした顔をコテンと小さく傾けた。
あまり知られていないが(でも高2のほとんどが感づいていると思うが)、彼女はちょっとしたお嬢様だ。親が確か大企業の偉い人だったと思う。だから、あたしは引きつった笑顔を作った。
「そ、それはいらないかなー」
「そう?」
じゃあ、と彼女のセーラー服の後ろ姿が去って行くのを、あたしはぼーっと見送った。しまった、同じクラスなのに流れでお別れしてしまった。
少し不気味な出来事だったけど、まあお嬢様のいつもの謎発言だろうと、気にしないことにした。
ところが、この話はこれで終わりではなかった。
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