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ま、とにかく法を犯してまでそんな魔導書を手に入れたくれえにガチな俺なんだが、いかんせん起業したばかりなんで知名度が低い…てか、ほぼゼロだ。
金がねえんで事務所を構えて看板出してるわけでもねえし、こうして俺は仕方なく、今、この人が集まる大通りでビラ配りをしているっつうわけだ。
「新しく始めた怪奇探偵で~す。幽霊でも悪魔でも、不思議な事件をなんでも解決いたしますよ~」
ハードボイルドな俺には似合わねえ地味が仕事だが、俺はいつになく低姿勢で、裏紙に手書きをした仕事募集のチラシを道行く人々に手渡してゆく。
だが、多くのやつらが受け取るのすら拒否するし、受け取っても興味なさそうにポケットに捻じ込んでしまうのがほとんどだ。
「チッ……これじゃあ骨折り損のくたびれ儲けだな……」
その手応えのなさに舌打ちをすると、いい加減、こんな無駄な作業はやめにしようと思った時のことだった。
「おい、貴様、ここに書いてあることは本当か? 怪奇現象をなんでも解決できるというのは?」
不意に、そんな男の声が傍らでした。
「ああん? ……あ、いや、もちろん本当ですぜ、旦那。どんな事件もチョチョイノチョイでさあ」
完全に油断していた俺が目深にかぶった灰色の三角帽を上げてそちらを覗うと、そこには身形のいい一人のオヤジが立っていた。そういや、さっきチラシを渡したような気もする。
赤いシルクのプールポワン(※上着)に黄色のキュロット(※半ズボン)……立派な口髭を蓄えた高圧的なその顔立ちや身形からして、おそらくはエルドラニア人の役人か裕福な商人だろう。
「あのう……もしかして、お仕事のご依頼ですか?」
もし依頼者ならば、こいつは金になりそうだ……俺は背を屈め、手を擦り合わせながら愛想よく尋ねてみる。
「まあな。なんとも胡散臭いが、ダメもと試してみるか……成功した時のみの後払いでいいなら雇ってやる。それでどうだ?」
すると、わずかの間考えた後、その紳士は疑るような視線を俺に向けならがらも、そんな条件付きでの依頼を口にする。
「後払いですかあ……まあ、よござんしょう。で、どのようなご依頼で?」
金持ちのくせしてなんともケチくせえ野郎だが、この際、選り好みはしてられねえ……俺は一も二もなく、内容を確かめることもせずにその依頼を引き受けることにした――。
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