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「――キーン!? そんなやつ知るわけがないだろう! 貴様、わしに難癖をつける気か!?」
「そ、そ、そんな名前の男は知りませんわ! な、なんなんざますの藪から棒に!?」
すると、スティヴィアノと奥さんのダイランは、尋ねるなり速攻で首を横に振る。だが、その血相を変えて声を荒げる様子がどうにも怪しい。
「ねえ、キーンってもしかして前にいた……」
「うん。そうだよね。いつの間にかいなくなっちゃったけど……」
さらには両親に質問する俺の話を聞いて、長女のダナエラと長男のロービンがなにげにそう呟いたのだが……。
「子供が大人の話に口を出すな! おまえ達はどこか遊びに行っておれ!」
「誰か! 子供達の面倒をみてなさい! まったく、役立たずな使用人ばかりなんだから!」
その口を阻むようにして、フローリエンス夫妻は大声を出すと、驚く子供らをその場から追い払ってしまう。
ますます怪しいぜ……この因業そうな金持ち夫婦、ぜってえ何か隠してやがる……。
「ま、実際に見てみねえことには始まらねえ。さっそく今夜、お嬢さんの部屋に泊まってみることにいたしやしょう」
だが、これ以上訊いても口は割らねえだろう。俺は夫妻にそう告げると、一旦、準備を整えるためにこの騒霊の棲む豪邸を後にすることにした――。
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