Ⅳ 問題解決には最良の方法を

1/3
前へ
/10ページ
次へ

Ⅳ 問題解決には最良の方法を

 翌日、強力な悪霊を祓うために準備が必要とかなんとか言い訳をして、フローリエンス邸を後にした俺は、一応、キーンの言っていたことの裏をとるためにあちこち調べ歩いた。 「――ここだけの話、フローリエンスさんの使用人いびりはご近所でも有名よ? 短い間にもう何人も逃げ出してるんですから」  ゴシップ好きそうなとなりの奥さんにさりげなく尋ねると、そう言ってあっさりと教えてくれる。 「――ええ。フローリエンスさんとこじゃよく使用人募集してますよ。すぐ辞めちゃうんだとか。そんなに待遇悪いんですかね?」  また、街の人材派遣業者を方々当ってみると、従業員達は口を揃えて、みんなそういう風に言っている。 「――ああ。旦那に頼まれて、たまに沖へ重てえ麻の袋を捨てに行ってるよ……中身か? そいつは詮索しねえのが暗黙の了解ってもんよ。金さえもらえれば文句はねえ」  さらにはスティヴィアノが商売で使っている船頭になけなしの銅貨を握らせると、意味深な笑みを口元に浮かべながら、その下品な顔をしたオヤジはそんな風に答えてくれた。  ま、そのビジネスライクな人生哲学には同感だが……なんとも胸糞悪ぃことに、キーンの話はすべて本当だったようだ。 「そうなると、ますますキーン達を祓うのは気が引けちまうな……てか、むしろ味方してやりてえ気分だぜ……ん? そうか! よし、その手でいこう……」  改めてスティヴィアノ夫妻の悪業を確信し、霊達に同情の念を禁じ得ずに思案した俺は、俺もキーン達も双方望みをかなえられる、とある妙案を思いついた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加