1998人が本棚に入れています
本棚に追加
華京院様は、私のことをどう思っているのだろう?
無下に扱ってはいないし、今だと何だか優しい。
そう思うと胸がギュッと締め付けられそうになった。
どうしたら“特別”になれるのだろうか?
婚約者のふりではなくて……。
いつの間にか華京院様の特別になりたい自分が居た。
もしかして私……華京院様のことを好きになっているのかもしれない。
少しずつ芽生えた恋心。
しかし“ふり”をしている以上は、私は、それ以上でもそれ以外でもない。
その宙ぶらりんの関係が悲しかった……。
そんな中途半端な関係が続いたある日。
女将さんは、別の配達の仕事を私に任せてきた。
「これを敷地内にある総合病院の名誉院長先生まで
届けてほしいのよ」
「わ、私がですか!?」
いつもながら、どうして私なのだろう?
こういう偉い方の配達なら女将さんの方がいいのでは?失礼があったらいけないし。
しかし女将さんは、否定を許さないぐらいの笑顔で
「よろしくね」と言ってきた。
その迫力に意見することは出来なかった。
どうしよう……自信ないよ。
自信がなくても行かないといけなくなり
私は、渋々に着物を着て総合病院に向かった。
ベリーヒルズビレッジにある総合病院は、外科や
産婦人科など複数の科がある病院なのだが
セキュリティーやサービスがホテル並みに豪華で有名だ。
芸能人も御用達で、病院食も豪華で全室個室だそうだ。
確かに豪華な病院なだけはあって、凄く大きい。
これは、緊張しない方が無理な気がする。
オフィスビルに入るのも最近ちょっと慣れただけで
未だに緊張するのに……。
私は、何度も深呼吸をすると中に入っていく。
うわぁ~さすが設備が良くて広い。
総合案内のところで尋ねると連絡をしてもらい
名誉院長室まで案内してもらった。
「し、失礼します。如月から来ました蓮見花恋です。
お茶菓子をお届けに参りました」
最初のコメントを投稿しよう!