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そういって紡がれた言葉。
それはボクが考えていたものと全くの別のものだった。
胸のつかえが溶けた瞬間。
僕は、瞳矢の指になるべく、オーケストラの譜面から、瞳矢が抜き出した音を拾い集めて、
それを超絶に聴こえる感じに、音と指使いを抜き出して、鍵盤に乗せていく。
「左手のピアニスト。
今のボクの夢は、左手のピアニストだ」
瞳矢の自身に満ちた曇りのない音色は、
この先の未来への希望すら感じらせる音色だった。
「瞳矢君、素敵な演奏を聞かせてくれて有難う。
今度、多久馬の病院で、瞳矢君がミニコンサートを開くなんてどうだろう。
昔は、真人の母親が演奏して、時折、冴香さんが演奏して……今度は真人が演奏してくれる。
そこに瞳矢君も一緒に出てみないか?
無論、出演料も支払う」
突然言い出した父の提案に、僕たちは驚くばかりだったが、
瞳矢のおばさんは嬉しそうに「有難うございます。院長先生」と微笑んだ。
その日、父は和羽姉さんが作ってくれたご飯を一緒に食べて、
僕と瞳矢が奏でるピアノを楽しんで、檜野家を後にした。
瞳矢に僕が出来ること。
ずっと迷走していた答えが少し見つけられた気がして、
僕は僕自身の音色も探し続けたいとそう思った。
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