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「冬兄さんは知ってるの?」
その問いかけに、
瞳矢はゆっくりと横にふった。
「先生には伝えてるけど、
兄さんにも家族にもままだ伝えてない……。
今はしばらく時間が過ぎたら手の症状も落ち着くから。
ずっと六月から投薬治療を続けてきたし、
皆、その薬に希望をのせてここまで来てる。
完全に治す薬じゃない。
症状の進行を遅らせる薬だって、
その意味を嫌ってほど感じ取ってるところ」
そういった瞳矢の低い声が、
僕の心に重くのしかかった。
「ごめん、姉ちゃん。
すぐ行くよー。夏休みの宿題、まだ終わってなくて格闘してたー」
なんて嘘を明るい声で出すと、
瞳矢は、にっこり笑って部屋を出ていった。
「もう、瞳矢。何してるのよ。
二学期も始まってるのに夏休みの宿題って」
「宿題、大変なんだよー。
ほらっ、右手でペン持つの大変なの知ってるだろ」
そういって、瞳矢は今、
右手が不自由なのを受け止めて当たり前のように
振舞いながら会話を続けようとする。
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