13人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
学校の授業が始まると、
僕は教科書をめくりながらも、
なかなか集中できないでいた。
瞳矢の病気は……
点滴の成果が出てるのかどうか気になってる。
右手の脱力や浮腫みは以前に比べて
強く出てるような気がするし、
スプーンやフォークも持てる者の、口元には運びづらくなってる。
柄は、細いものよりも太い方が握りやすくなってるもみたいで、
いろいろと生活スタイルが変わってきてるのも現実だった。
ただ……僕は瞳矢の先生から話を直接聞くことはできないし、
瞳矢からもなかなか話してもらえない。
閉ざしたい気持ちがわかるから……。
自分で閉ざして蓋をしてしまいたくなる気持ちもわかるし、
それだけじゃダメだって言うのも、
僕には痛いほどわかる。
僕は……君に何が出来るんだろう。
誰かの癖を感じ取って真似するのは得意なんだ。
だからプレイエルを演奏するとき、
僕は無意識のうちに瞳矢の音色に似せようとしてしまう。
僕の癖からなってしまうものだけど……、
完全にピアノを演奏することが出来なくなったら、
僕は瞳矢の指になる?
なんて、そんな馬鹿げたことすら想像してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!