10.僕が君の指になる -真人-

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学校の授業が始まると、 僕は教科書をめくりながらも、 なかなか集中できないでいた。 瞳矢の病気は…… 点滴の成果が出てるのかどうか気になってる。 右手の脱力や浮腫みは以前に比べて 強く出てるような気がするし、 スプーンやフォークも持てる者の、口元には運びづらくなってる。 柄は、細いものよりも太い方が握りやすくなってるもみたいで、 いろいろと生活スタイルが変わってきてるのも現実だった。 ただ……僕は瞳矢の先生から話を直接聞くことはできないし、 瞳矢からもなかなか話してもらえない。 閉ざしたい気持ちがわかるから……。 自分で閉ざして蓋をしてしまいたくなる気持ちもわかるし、 それだけじゃダメだって言うのも、 僕には痛いほどわかる。       僕は……君に何が出来るんだろう。 誰かの癖を感じ取って真似するのは得意なんだ。 だからプレイエルを演奏するとき、 僕は無意識のうちに瞳矢の音色に似せようとしてしまう。 僕の癖からなってしまうものだけど……、 完全にピアノを演奏することが出来なくなったら、 僕は瞳矢の指になる? なんて、そんな馬鹿げたことすら想像してしまう。
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