10.僕が君の指になる -真人-

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その日の放課後、 学校が終わって僕たちは校門前で別れた。 瞳矢は通院日の為、おばさんと出かけた。 そして僕は、バスに乗って父の病院へと足を運ぶ。 「あらっ、真人くん。こんにちは。 学校終わったのね?」 多久馬総合病院のエントランスには、 冴子おばさんから送られグランドピアノが展示されていた。 ふと引き寄せられるようにピアノへと向かう。 鍵盤の蓋を開けて、フェルトを取り除くと、 ゆっくりと鍵盤の上に指を乗せた。 一呼吸して、その位置から周辺を見渡す。 あっ、あそこにいる子供、ちょっと気になってそうかも。      そう思いながら、僕は軽く目を閉じて鍵盤の上に指を走らせた。 確か……、母さんとよくやってたんだ。 こんな遊びを……。 ミスタッチも気にせずに鍵盤に指を走らせ始めたのは、 大好きなリストの鬼火。 超絶技巧を無心に弾いていると、 雑念がなくなって、頭の中がクリアになる瞬間がある。 中学生の僕が超絶技巧ばかり好んで演奏してたのは ただ無心になれるのと、母さんに負けたくなかったから。 咲夜に負けたくなかったから。
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