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短い間、咲夜と暮らした中で
僕にも闘争心があったことに気が付いた。
そんな僕自身に気づかされた鬼火。
気が付いたら、3分少しの時間はあっという間に過ぎて、
僕は最後まで演奏を終えていた。
観客がないまま演奏していた僕の傍には、
気が付いたら輪が広がっていて、
拍手が広がってた。
「真人くん、
やっぱり神樂さんの息子さんなのねー」
そういって、浦和さんが話しかけた。
「あっ、ごめんなさい。
父の部屋に行かないとでしたね」
慌ててピアノの蓋を閉めて、
演奏を聞いてくれてたと思われる人たちに、
小さくお辞儀をすると逃げ出すように、
その場所を後にした。
「あらっ、真人くん。どうして逃げるの?
ピアノ素敵だったわよ。
指が鍵盤の上で踊っているみたいね。
神樂さんが演奏していたのも凄かったけど、
真人君も凄かったわ」
純粋な思いで伝えてくれる浦和さん。
だけど僕の音色はまだ完成していない。
そして今は、この音色を完成すべきなのか、
それを後にしてでも、
僕が瞳矢の指になる……のがいいのか悩んでる自分がいる。
無心になってピアノを演奏しても、
答えは出なかった。
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