10.僕が君の指になる -真人-

9/12
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
エレベーターに乗り、父が待つ部屋へと向かうと、 白衣を脱いだ父がソファーに腰かけて待っていた。 「真人、階下が賑やかだったね。 昔、神樂が演奏してくれていた時代が懐かしい。  また何時でも、真人が演奏したいときに 演奏してくれるといい。  時には神樂がしていたみたいに、 患者さんたちからのリクエストを聞いて 演奏するのもいいかも知れないな」 そういいながら、父は懐かしそうに目を細めた。 「父さんは病院でも、愛の夢を演奏してもらったの?」 「父さんにとって、神樂が奏でる愛の夢は特別な曲だからな」 「そう。 なら、今度は僕も演奏しようか?」 「あぁ、楽しみにしている。 さて、聞かせてくれ。最近の真人の気持ちを」   そう言うと父は、僕が話し出すのを静かに待つ。 最近は、ダンプカーが走って揺れても、実際の地震で揺れても なかなか発作を起こしづらくなったこと。 だけど檜野の家にいて、 瞳矢との距離感、瞳矢との接し方に悩んでることを吐き出す。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!