10.僕が君の指になる -真人-

10/12
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
「真人、ALSと言う瞳矢君の病気にまつわる資料は 前にも勉強したね。 そのうえで、真人は瞳矢君と過ごすことを選んだ。 今は逃げ出さずに、心のままにつきすすみなさい。 ただ悩みぬいた先の道で、迷路になって戻って来れなくなったら、 その時に私は力になろう。  今は真人が、瞳矢君の為に考えて動くことが大切だ。 薬はまた少し調整しておこう」 「……父さん、檜野の家にいて 冬兄さんが沢山抱え込んでるのが見てて伝わってくる。 だから……」 「あぁ、冬生のこともちゃんと見ている。 真人は心配しなくても大丈夫だ」 父のその言葉に、目を閉じて頷いた。 「私ももう上がる時間だ。 真人、檜野家まで送ろう」 そう言うと父も鞄を持って帰宅準備をする。 父の電話で車が病院の裏口へと横付けされて、 僕は父の車の助手席へと乗り込んだ。 父の車内は、 いつも母さんのピアノの音色で包まれていた。 後部座席に体を預けるように、 僕はその音色のゆりかごに包まれて 眠りの中へと誘われていくみたいだった。 気が付いたら 檜野の家の前で父に体を揺り起こされた僕。 慌てて体を起こすと、 瞳矢たちも帰宅したばかりのようだった。 
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!