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 俺の誕生日は八月だ。  なのになぜか、親友のみかげは、プレゼントに手作りマフラーをくれた。  みかげは近所に住む幼なじみで、小学校時代のサッカーのチームメイト。そして親友だ。  昔から、ずっとショートカットで、それが黒目勝ちの強い眼差しによく似合う。  いわゆる美少女というよりは、中性的な顔立ちで、やせっぽちだ。  その容貌があまり異性を感じさせない点も、俺には居心地が良かった。  今の中学に女子サッカー部はないから、彼女は陸上部で活躍しているけれど、今でも帰りが一緒になったりすることはある。 「なんでマフラーなんだ? このくそ暑いのに」  俺は率直に訊いた。 「女子力アピールのつもりだったんだけど」とみかげ。 「ジョシリョク?」 「いやあ、本当は、去年のバレンタインにキミに渡すつもりだったんだ。  なんだけど、間に合わなくってさ。  でも、せっかく作ったから」  みかげは何でもないふうにそう言って笑った。  それはアピールになるのだろうか。  いや、それ以前に。  ジョシリョク。  そんなものをアピールしてどうするつもりなのか、俺にはそのとき、見当もつかなかった。
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