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ヤフォー知恵袋、それが今の私の生き甲斐だ。 ヤフォー知恵袋は、最も有名な質問投稿サイトだ。 アカウントを登録をすることで、誰でも簡単に疑問に思ったことや悩みを投稿することができ、また、それらの質問や悩みに対して回答することもできる。 そして、質問者が最も優れていると思った回答にはベストアンサーという称号が与えられる。 質問は恋愛や学問、雑学やエンタメといった様々なカテゴリーに分類される。 それぞれのカテゴリーで多くのベストアンサーを重ねた者はカテゴリーマスターの称号を得ることができ、多くのユーザーからの信頼を得るのだ。 私、中山結衣(なかやまゆい)(20)はこのヤフォー知恵袋の虜になり、ベストアンサーを重ねるうち、人間関係の悩み(友人関係や恋愛関係、家族関係など幅広い)のカテゴリーにおけるカテゴリーマスターにまで成り上がっていた。 悩める者たちに的確なアドバイスを与える。 それによって「ありがとうございます!!」などと感謝される。 それがとても気持ちよいのだ。 初めてベストアンサーを勝ち取ったその日から、私はこの快感にヤミツキになり、家での多くの時間をこのヤフォー知恵袋に費やすこととなった。 今日も私はベストアンサーを得るためにパソコンを立ち上げ、ヤフォー知恵袋を開いた。 そして、その日に投稿された質問を漁る。それが私の日課なのだ。 いい質問はないかと漁っていると、通知が来ていることに気づいた。 確認してみると、それは私宛の回答リクエストだった。 このヤフォー知恵袋では、特定のユーザー宛に回答を依頼することのできる回答リクエストなる機能が存在する。 カテゴリーマスターは、その信頼度から、こういった回答リクエストを貰うことがたびたびあるのだ。 私はリクエストとして届いた質問の内容を確認した。 『メルティー(これは私のハンドルネームのようなものだ)様。 このたびは、娘との関係性についての悩みがあり、回答リクエストをさせていただきました。 私(父親)には大学生の娘がいます。 その娘と、ここ四年全く話をしていないのです。 娘が小中学生だった頃は、とても仲が良く、休日に一緒に買い物に行ったり、ご飯を食べに行ったりしていました。 しかし、娘が高校生になった辺りから、主に娘の将来について私と娘との間で意見の食い違いが起こり、衝突し合うようになりました。 次第に娘と会話する機会は減っていき、最後にはほんの些細なことから大喧嘩をしました。 それが四年ほど前のことです。 その日から、娘は私を完全に拒絶するようになりました。 最初のうちは私も娘に腹を立てていたので、勝手にしろと言ってさほど気にしていませんでしたが、しばらく時間が経ってから、一人娘と会話をすることができない悲しさがじわじわと襲ってきました。 しかし、そのときにはもう時既に遅し。 娘は私を徹底的に避け続けました。 妻もこの状況に気づいていますが「年頃の女の子にはよくあること」といって解決策を提示しようとしません。 そんなふうにして、娘と一切口をきかないまま4年の時が流れていきました。 時間が経てば経つほど、仲直りをすることも難しくなります。 どうしても、娘に仲直りの話を持ちかけることができないのです。 本当に自分のことを情けなく思います。 大切にしてきた一人娘に対して素直になることすらできないのですから。 私は娘が心配です。 妻を通じて私は娘の話を聞いています。 聞いたところによると、娘は最近大学を留年してしまったみたいです。 それに、大学に入学してから、以前よりも部屋にこもりがちになったといいます。こんなみっともない私ですが、どうかアドバイスをいただけませんでしょうか? こんな不器用な私ですから、仲直りには相当な時間がかかると思います。 ですから、メルティー様に経過報告をする形で、その過程を見守って頂きたいのです。 こんな話、誰にもすることができません。どうか、この私にアドバイスをください。よろしくお願いします。長文失礼いたしました。』 なんだか私と父親の関係に似ているな、質問文を読んで私はそう思った。 約四年会話をしていない父と娘。 それはまさしく私と父親の関係だった。 そんなことを考えているうち、階下で母が私を晩ご飯に呼ぶ声がした。
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