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「結衣、ご飯できたわよ」 「ちょっと待って、すぐ行くから」 そう言って私は下へ降りていった。 食卓につき、黙々とご飯を口に運んでいる私を、母が何も言わずじっと見つめている。 「なに?」 「…大学の方はどうなの?今年は大丈夫そう?何も言わないけど、お父さんもすごく結衣のこと心配してるみたいよ。何か悩みがあるんだったら遠慮しないで言っていいからね。」 「大丈夫。ちゃんと授業も行ってるし、内容にもついていけてる。悩みなんてないから」 私は去年、大学を留年してしまっていた。 本当は、今通っている大学に行きたくはなかった。 普通の4年制大学ではなく美大に行きたかったのだけれど、高校生の時、絵に対する自信をなくしてしまったのだ。 それには父も大きく関わっている。 絵なんかでやっていけるはずがない、それが父の言い分だった。 「普通の大学に行き、普通の企業に勤めて、安定した人生を送る、それでいいじゃないか」とよく父は言った。 私も薄々、自分に絵で食っていけるほどの実力はないということに気づいてはいたから、結局大して受験勉強もしないまま、自分がいけるレベルの普通の4年制大学に進学した。 けれど、勉強に対するモチベーションは一向に上がらなかった。 自分がやっていることの意味が分からないまま時は過ぎていき、気づけば授業にもまともに出ずに留年してしまっていた。 しっかり勉強していれば、今私は大学3年生になっているはずなのだ。 ちゃんと授業に行っているとは言ったものの、学校に行かずにどこかのカフェに行ったりバイトをしたりして、正直なところ、あまり大学には行けていない。 そうやって日々を浪費する私に、ヤフォー知恵袋は適切な居場所を与えてくれた。 ベストアンサーを勝ち取って質問者から感謝されることで、私は自らの存在意義を見出しているのだ。 「そう。何かあったら言っていいんだからね。あんた、自分のことはあんまり人に言わないから、何か抱えてるんじゃないかって心配なのよ」 「大丈夫だって。本当に、心配無用だから!」 食事を終えると、私はさっさと自分の部屋に戻った。
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