ベストアンサー！

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ジリジリジリジリッとスマホの目覚ましが、私を叩き起こすべく不快な鳴き声で喚き立てる。

私は寝ぼけていて、スマホを取って目覚ましを止めることさえできない。
指が細かい動きをすることができないのだ。
仕方なく、乱暴にスマホを布団の奥深くに沈めて音を和らげた。
しかし、依然として不愉快な音は布団を突き抜けて鼓膜を刺す。

「うるさい…ああ眠い…」
一限目から授業があるというのに、瞼を上げようと何度試みても、重すぎて瞼が持ち上がらない。
私の瞼は今、大型トラック顔負けの重さにまでなっているのだろう。

もう休んじゃっていいかな…。来年また頑張ればいいや…。
眠気は私にろくな考えをもたらさない。

いや、それはいけない。
今日休んで来年に期待しても、来年もまた同じことを繰り返すだけだ。
何年経とうと朝は眠いし、学校は面倒くさいのだから。

それに、私は留年してしまっているのだ。
一年留年しただけで就職活動に大きな影響が出るというのに、二年も留年してしまったらどうなるだろう？
この社会はどこかで躓くということにはひどく不寛容なのだ。

人生の石に躓いて転び、一年間起き上がれないということを面接官たちは許してくれない。
道と呼べるものもないような荒れ果てた人生の森で、素早くかつ丁寧に道を切り拓きながら進むことが求められる。
私はそんな厳しい社会の中に産み落とされたのだ。

まあ要するに、今日起きなければ相当マズいことになるということだ。
私は全身の力を振り絞って布団から跳ね起き、やかましいスマホを黙らせた。

「ｱｱ眠い…一限目から授業をしたって誰も幸せにならないのに…この世には余裕というものが足りてないよ」
そんなことをブツブツと呟きながら階段を降りて食卓へ向かう。

食卓の上には、パンのカスが少し残った平たい食器と、底に少しコーヒーの残ったカップが置かれている。
父のものだ。
父は私が起きてくる時間には大抵もう会社に出発してしまっているのだ。

私は寝ぼけた表情のまま食卓につくと、目を瞑ったまま味の薄い食パンをゆっくりとかじり始めた。
睡眠欲と食欲を同時に満たしているのだ。

そうやってゆっくりと食事を終え、顔を洗って歯を磨き、そして着替え始めた。

まったく、大学というものは制服がないから困る。
困ったことに、私の服のバリエーションは4通りほどしかないのだ。
その4通りを上手いこと回して、いかにたくさんの服を持っているように見せるかがポイントなのだ。

先週の火曜日(今日は火曜日だ)着ていたものとは違う服を着て、軽く化粧(これまた面倒だ)をして家を出た。

スーツを着た人々で溢れかえった電車の中に、なんとか自分のスペースを見つけて体を押し込む。
下らない大学の下らない講義のために、四方をおじさんに囲まれながら電車に約30分揺られるのだ。

最初の15分はあまりに混雑していて、スマホを触ることさえできない。
しかし、電車が都市の中心部に着いて大量のおじさんたちが流れ出ていくと、スペースができて、ようやくスマホを取り出すことができるようになる。

最初の15分をなんとか耐え抜いた後、私はヤフォー知恵袋を開くためにスマホを取り出した。
スマホでもパソコンでも、私は同一のアカウントを使ってヤフォー知恵袋をしている。
が、質問に答えるのはパソコンを使っているときだけだ。

スマホは画面が小さいし、スマホだとあまり質問に対して真剣に向き合っている感が出ないのだ。
あくまでも気分の問題だ。
けれど、これは私にとってとても重要なことなのだ。
スマホで適当な回答をしてしまって、信頼度を損ねてしまっては困る。
質問には常に100％で向き合う、これも私の主義なのだ。

スマホでヤフォー知恵袋を見る主な目的は、投稿された質問をチェックすることと、通知を確認することだ。
今日は特に後者がその目的の大部分を占めていた。
というのは、やはりなんといっても、早く昨日の質問の主が私の父親であるかどうかを確かめたいからだ。

ヤフォー知恵袋のアプリをタッチしようとして、急に心拍数が上がってきた。「本当にお父さんかもしれないんだよね…」
小さく深呼吸をして、私はヤフォー知恵袋のアプリをタッチした。

が、通知は届いていなかった。
なんだか少しがっかりした。
まあ、考えてみれば当たり前のことだろう。
私が最後に返事をしたは昨日の夜だ。
父は出勤するのも早いし、そんなに返事をする暇もないだろう。

通知が無かったことを確認すると、珍しく私は他の質問を漁ることもせず、スマホの画面を閉じ、電車の外を流れる景色に目を向けた。
そして、父親のことを考え始めた。

「もし仮に、もし仮にだよ、あの質問の主が本当にお父さんだったとして、私はどうする？お父さんと仲直りするために動く？待って、でも、今の惨めな生活があるのはお父さんのせいなんだよ？許すの？いやでも、本当に全部お父さんのせいなの？お父さんのせいにして、自分から逃げてきただけじゃない？うるさい。ここで仲直りしなかったら絶対にいつか後悔するよね…。ああどうしよう…」と、私は自分の中で自分と対話した。

大学のキャンパスの最寄り駅のホームにゆっくりと電車が止まり、ドアが開いた。
私は亡霊のようにキャンパスに向かって歩き始めた。