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式が終わると、俺は二次会を断ってそのひととホテルに入っていった。 ラウンジで少し飲んでから、ぽつりぽつりと話をする。 あいつと出会った経緯とか、今までのこととか、情けないことにほんの少しだけ俺の感情も吐き出してしまった。 不思議とそのひとの隣は穏やかで居心地が好くて、低く頷く声を聞いていると隠していたかった本音まで全て話してしまいそうになった。 そうして俺の酔いが回ってくると、休んだ方がいいと部屋を取ってもらった。本当にどこまでも情けないやら恥ずかしいやら…。 なのにそのひとは終始優しくて、こんな俺の話にもずっと耳を傾けてくれていた。 窓の外には、きらきら光るビルの明かり。 今日の花嫁の衣装を、彼らを取り囲んでいた輝きを嫌でも思い出してしまう。 …二人は、本当にきれいだったなぁ。 俺はあの中には入れない。 俺じゃあ駄目だったんだから。 「わ、つめたっ」 「ふふっ、また考え事かな」 タイを緩めてベッドに横たわる俺に、彼は冷たい水が入ったペットボトルを手渡してくれた。 「あの…」 「そんなに畏まらないでいいよ。おれたち似た者同士でしょう」 「お、れ…」 「違うよ、責めてるんじゃない。きみは悪くなんてないんだ。きみが悪いって言うなら、あの二人もおれも同罪。いや、それ以上かな」 「やっぱり、怒ってますか…」 おどおどと見上げた先には、びっくりするくらい穏やかな笑みが浮かんでいた。 澄んだ湖面のようなその表情だけで何故だか俺まで落ち着いた気分になってしまう。 とても奇妙な状況なのに。 「怒ってなんていないよ。きみにはね」 俺には。 含みのある言い方は、別の誰かに向けられているような気がした。 俺の幼馴染み…その婚約者に、つまりは彼女にだろうか。 このひとは知らなかったのかな。 あの二人が結婚するということを知らずに、彼女のことを愛していたのだろうか。 だとしたらそれはとても、とても…。 「悲しい、ですか」 ぽつりと溢した一言に、そのひとは大きく目を見開いた。 ゆっくりゆっくり見開かれる黒い瞳には星が宿っているようで、不思議な引力でも働いているのか、目が離せない。 額に置かれた手は白くて、冷たくて気持ちがいい。 お酒のせい、だろうか。 眠ってしまいそうなほど、このひとの隣は何故だか心地が好い。 似た者同士。 …似た者同士、かぁ。 頬を生暖かい何かが伝う。 純白の衣装を身に纏って微笑む幼馴染みの姿をぼんやり思い浮かべながら、俺は意識を手放してしまった。
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