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ルタニはロクウッドを慰めるべく、甲羅の中を覗き込んで言いました。
「いや、なかなか立派なものだとわたしは思いますよ、ロクウッド。人間の世界では亀は様々な文化において、幸福や叡智の象徴として扱われていますからね。聡明で忠義心にあついあなたにはぴったりだと、常日頃感心しているのです」
「……さようでございますか……?」
そっと頭を出したロクウッドに微笑んで、ルタニはうなずきました。
「ええ、そうですとも。さぁ、とにかく中へ。ちょうどアップルパイも食べ頃です」
「そういえば先ほどから美味しそうないい匂いが……」
鼻を動かして室内から漂ってくるパイの匂いを嗅ぐロクウッドにつられて、ソロンも思わず鼻を動かしました。途端にソロンのお腹がぐぅぐぅと音を立てました。ソロンのブロンズ色の顔が真っ赤になったことがわかりました。
「は、早く入れよロクウッド……!」
慌てたように甲羅を拳で叩いたソロンに、ロクウッドはぶつぶつと文句を言いながら、のそのそと玄関ホールに入って行きました。
「まったく、なんて亀づかいの荒い元うさぎでしょうかね……」
「何か言ったかロクウッド? だいたい、こんな風に家を宙に浮かせてるっていうこと自体がどうかと思うんだよ。そんなに力を誇示したいのかよ」
ソロンはようやくロクウッドの甲羅から下りると、風に乱れた黒髪を払って腕を組み、上品なしつらえの玄関ホールをじろじろと見回しました。
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