サヨナラ・カウントダウン

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 とうとうやってきた、最終日。  キミはウキウキした様子で出かける。目的地は家電ショップ。売り場の隅にあるカウンターに腰掛けると、店員さんと話しはじめた。 「いらっしゃいませ! 今日はどういったご用件で?」 「スマホの機種変更で」 「かしこまりました」  キミは展示されてある最新機種のスマートフォンを手に目を輝かせている。 「では、契約を進めていきますね」  店員さんはパソコンを操作しながら、キミの望むプランを提示していく。そして、プランが決まると、「では、少々お待ちください」と言い残し、バックヤードに姿を消した。 「いまお使いの本体は、いかがなさいますか?」  キミはボクの背中をさすりながら、「下取りでお願いします」と言った。 「データのバックアップのほうは?」 「昨晩、済ませました! 超難しくて、めっちゃ時間かかったんですけど、なんとか」 「それはよかったです。では、お預かりいたしますね」  店員さんが手を差し出す。キミはボクとのお別れが少し名残(なご)り惜しそう。手のひらにボクを包んだまま、お気に入りのスマホカバーをそっと外した。  キミはボクをいろんなところに連れていってくれたね。ありがとう。  たくさん写真や動画を撮ってくれたから、ボクの中にはキミの笑顔や、友達、家族、ペット、いろんな笑顔が詰まってる。きれいな景色もそう。美味しそうな食べ物や飲み物だってそうだよ。  アプリもたくさんインストールして楽しんでくれたね。気に入らないとすぐにアプリを消しちゃうキミの性格も、ボクはキライじゃなかったよ。  キミの口癖は、「暇だなぁ~」。やることがないと、すぐにそう言う。でもね、キミが暇を感じれば感じるほど、ボクに触れてくれる時間が長くなるから、ボクはキミがずっと暇だったらいいのにな、って思ってた。  そして何より、キミと彼氏をつなぐことができてよかった。もうボクは、キミと彼氏との思い出を詰め込むことはできないけれど、新しい機種にたくさんの思い出を残してね。
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