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激しい雨風のせいか、それとも緊張のせいか、男性はひどく滑舌が悪かった。
とくに「電柱」という単語が、「れんちゅう」つまり、「連中」としか聞こえないのだ。
「私のいる熊本の天草地方は、
台風の通り道です。
間もなく上陸する恐れがあります」
「先ほども、申し上げましたが、先ほど目の前で、
電柱（連中）がなぎ倒されました。
激しい雨風が、建物や私の顔にぶつかっています。
今はこれでも、ちょっと収まりましたが、
最大瞬間風速は５０メートルにも達し……」
「次々と自転車やバイクなどをなぎ倒し、
電柱さえもなぎ倒されています。
中には、真っ二つに折れて倒れた電柱もいて、
ひどい有様です。
見たことのない、光景です」
「……はい、そうです。
台風接近時に空が真っ暗になり、
轟音と閃光がして、突風が吹きました。
目の前で電柱が倒れました。
一瞬の出来事でした、……はい」
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