思いやり

9/12
前へ
/12ページ
次へ
事実は時として、小説よりも奇怪である。 人からの伝聞に空想のフィルターをかければ、さらに複雑怪奇になる。 カズくんは事実を正確に伝えていたが、私の耳が音声を誤変換していたようだ。 もう、笑うしかないだろう、というレベルの情報伝達ミス。 私は5分足らずの間に、怒り、笑い、ついには笑いすぎて泣いてしまった。 風の音が轟く中、新人と思われる男性レポーターが叫んでいる。 「物凄い音です。  びゅうびゅうという風の音に、  時おり『めりめり』という、  何かが裂ける音が混じります。  先ほど、私たちの目の前で、  『れんちゅう』がなぎ倒されました」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加