So long! さようなら! -10-

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13.  損得勘定の激しい女だし難しい事や煩わしい事は苦手 なのでよけいな事はしないだろう。  保険だが、よほど低い額が提示されたのだろう。  でなければ、自分を遥に返したりはしないと思うからだ。  保険の事はしっかり者で聡明な元の妻、遥に頼ろうと決めていた。  何を隠そう、生命保険の受取人は今も遥のままだ。  里子の事が心配だからと遥の元から去った修造だったが 里子と暮らすうちに不倫していた時には知り得なかった さまざまな里子の悪癖が判り、生命保険の事は何となく言いそびれて 今日まできてしまった。  だが、間違いだらけの人生でこの事だけは、正解だったのだと思えた。  いや、まだ自分は生きているので遥には何の恩恵も与える事はできないが 実際自分が亡くなったら少しは元の妻子に償いらしき事ができるという証は 悪人である自分の唯一の贖罪になるのだ。  罪は消えなくとも。  只の自己満足だな、と修造はひとりごちた。  今回の交通事故の後、意識が戻り翌日姉と話ができるように なった時、真っ先に保険の事で遥に連絡を取ってほしいと 頼んでいた。  自動車保険と生命保険に付けていた障害特約の保険金になるか 給付金になるのか、よく判らないが諸々の手続きを頼む為に。  保険会社の調査に伴って、病院の診断書なども必要になって くるかもしれないので、給付金等が降りるのはずっと先になるかもしれない。  それらの保険金あるいは給付金は、遥に管理してほしいという事も 伝えてもらった。  自動保険は保険会社任せにしていると里子の言う通り、最低額の 支払いになるだろうから弁護士を雇って任せたほうがいいだろう。  僕が細々と指示をしなくともこれ位の事、聡明な遥ならきっと上手く 処理してくれるだろう。
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