42歳男性、職業ペット

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42歳男性、職業ペット

 閑静な高級住宅街。  スーツを着た的場はインターホンのボタンを押していく。大抵が仕事で留守か、訪問販売や振り込め詐欺を警戒して居留守を使い、なかなか出てくれない。  それでも何件も廻っていくと、男性の家主がインターホン越しにまず応対してくれた。 『はい?』 「すみません、私のことをペットとして飼いませんか?」 『はぁ!?』 「あっ、何でもありません。すみませんでした!」  反応が悪いとさっさと退散、次の家に向かう。  何処の家に行っても、結果は同じだ。 『あんた誰?』 「ペットです」 『警察呼びますよ』 「すみませんでした」 『はい?』 「もしもし、私ペットをやっておりまして」 『ペット!?』 「はい、私を飼いませんか?」 『頭おかしいんじゃないのか、帰れ!』  素っ気ない対応ばかりされるので、的場も喋り方を少し工夫してみる。 『どちら様ですか』 「私、レンタルペットをしている者でして」 『ペットのレンタルサービス?』 「その通りでございます」 『面白いなぁ、どんな生き物が借りれるの?』 「私でございます」 『ワタクシ!?』 「はい。人間の僕がペットです。僕を飼いませんか?」 『あんた、可哀想だな……』 「ぜひ、私を飼って下さい!」 「何しているんだ!?」  大声が聞こえて振り返る的場。  通報を受けて駆けつけた警察官達に取り囲まれていた。
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