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釘を擦りつけたみたいなアナウンスが流れる。それと同時に猿たちの声が止まった。振り向くと、二人とも人間に戻っていた。
「今日はいつもより早かったね」
「そうだな」
「あしたはもっとゆっくりでおねがいね」
「わかった」
早かった、というのが性行為なのか猿から人間に戻ったことなのかは、わからなかった。ただ男のズボンの股間部分は盛り上がっていて、薄い染みができていた。
「今のところ、犬、猿がいるからキジがいたら、桃太郎だな」人面犬が笑う。
「それだったら、桃太郎役は僕ですか?」
「そうだな。だって君は今から鬼に会いに行くんだろ?」
「まあ、そうと言われれば、そうかもしれませんが」
僕は人面犬から目をそらす。
「キビ団子は持っているかい?」
「そんなもの持ち歩いている人なんていませんよ」
「なぜ、携帯は持ち歩いてキビ団子は持ち歩かないんだい?」
質問を無視すると、人面犬は舌打ちをし、小便をし始めた。
悪臭が辺りに広がっていく。
「そういうのは電柱にしてくださいよ」僕は言った。
人面犬何も言葉を返さず、気持ちよさそうに身体を震わせ、伏せの体勢をすると大きく伸びをした。
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