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「大きくなあれ、大きくなあれ」
人面犬はそう言いながら僕の足元で小便を始めた。
男、女がその周りで踊り始めた。「大きくなあれ、大きくなあれ」
僕はすくすく成長していく。そしてついに、天井を突き破った。
「大きくなあれ、大きくなあれ」
声がどんどん小さくなっていくのに対し視線の先に人影がどんどんはっきりとしていく。
ああ、ずいぶん待たせてしまったな。口元が歪む。会いたくないし、逃げ出したいのに、身体が動かない。
「遅いよ」
雲の上を頭が突き抜けたときに聞こえてきたその声は遠い国の雨音のように小さかった。
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