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 涼太(りょうた)はいきなり男の子に告白をされた。学校の門を出て少し歩いたときだ。いきなり後ろから呼び止められて「付き合ってください」と言われた。 「へ?何処へ?」  交際の付き合うじゃなくて買物に付き合うだとかそっち系だと思った。だが男の子は真っ赤になってプルプルと頭を振る。学校の前にある道路だし同じ制服なので同じ高校の生徒だろう。通学のときに見たことがあるような気がするが記憶が定かではない。よっぽど目立っている子じゃなければ人間を覚えるには限界がある。 「あの、そうじゃなくて。交際を……」  男の子はそう言って窺うように上目遣いで涼太を見る。線が細くてなよっとした感じだが、滑々の肌に黒目がちの可愛い目。 「うーん、ちょっと話し合おうか。南大通りのコンビニにイートインスペースがあるだろう。そこでコーヒーでも飲もうか?」  男の子は顔をぱあっと明るくした。 「いいんですか?僕、あそこのアイスコーヒーが好き」 「ああ、今日は部活がなかったから時間があるんだ。君は予定はない?」 「はい。あったとしてもなくします。コンビニのコーヒーって安いのに美味しいですよね。僕、パン屋さんでバイトしてるんで奢りますよ」  涼太は困ったように笑った。知らない子に奢ってもらうわけにはいかない。 「いいよ、いいよ。じゃあ、行こうか」  学校からコンビニまでは歩いて十分くらい掛かる。それまで何か話さなくてはいけない。名前や学年を訊くのが妥当だろう。出来ればなんで涼太に告白したのかも言ってほしい。でも質問攻めは避けたい。
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