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テーブルの上に乗ったサラダが半分以上無くなった。この家は皆んな揃って野菜から食べる。涼太はビーフシチューに取り掛かる。ふうふうして食べると濃厚なデミグラスソースが口中に広がった。
「熱いけど美味しいや。食欲の秋だな」
「涼太はいつも食欲があるじゃない」
お母さんが言う。確かにそれもそうだ。部活をやってもやらなくても物が美味しく食べられる。真宙はどうなんだろう。内臓が悪いと言っていた。高校生で身体が弱いのは可哀そうだ。でもそれが嘘の可能性もある。だって明人が言うには後藤真宙は死んだって言うのだから。
涼太は綺麗に食べ終えて「ご馳走さま」をした。お母さんはまだ残ってると言ったが十分にお腹が膨れた。残りは朝に食べよう。
次の日は木曜日だ。制服を着て一階に降りる。テレビを点けるとニュースで天気予報を言っていた。千葉県は天気が良いようだ。涼太は昨日の残りのビーフシチューをロールパンと食べる。お祖母ちゃんは朝からしつこいものは食べられないと言って渋い顔をしている。
「お祖母ちゃんには赤魚がありますよ」
お母さんが言う。
「悪いねー。自分で焼くからいいよ」
「いえ、今日はパートが休みなんで私が全員の朝食の支度をしますよ。お祖父ちゃんも赤魚でいい?」
お祖父ちゃんは嬉しそうに目を輝かせる。朝の魚って老人には幸せな料理なんだろう。
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