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「僕の名前は知ってるかな?」  涼太はやんわりと言った。 「はい。橋本涼太(はしもとりょうた)さんですよね。同級生の間で有名なんですよ。バスケ部にカッコいい先輩がいるって体育館に見に行く子もいます。主に女子が騒いでるんですけどね」  涼太はこの子が言う通りバスケ部だ。中学時代からやっている。 「騒がれてるなんて気付かなかったよ。君の名前は?」 「後藤真宙(ごとうまひろ)です。中学時代は都内に住んでいたんですけど高校になって千葉に引っ越して来たんですよ。ここは海が近いし気に入ってます」  都内より千葉の方がいいのか。確かに泳げる砂浜が近くにある、涼太は夏休みの間、暇があったら海水浴へ行っていたので日焼けして肌が小麦色になった。土日は部活がないしバイトもしてないので八月いっぱいは十日以上は海に行っただろう。部活にはお盆休みがあったから暇な日が増えた。  今は九月だ。もう学校が始まっていて梅雨の間は真っ白だった学生が殆ど日に焼けている。だが、真宙は白い。海が好きだと言うが泳がなかったのだろうか。 「後藤くんは焼けてないけど?」 「ああ、パラソルの下にずっと居ました。僕、身体が弱いんで水泳を止められているんですよ」  涼太は不躾なことを言ってしまったと思った。 「ご、ごめん」 「いいんです。あの、真宙でいいんですよ。僕、先輩が泳いでる姿を見てました。気が付きませんでしたか?」  涼太を先輩と呼んでいて高校生だと言ってるのだから真宙は一年生だろう。涼太は二年生だ。この学校は偏差値が高いが頑張って入学した。今は皆んなに必死でついていっている。
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