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じゃれ合いながら歩いているとコンビニに着いた。涼太はドアで開ける冷凍コーナーから氷が入ったプラスチックのコップを二つ取る。
「奢ってやるよ。僕が年上だし」
「ほんと?」
「ああ、Mサイズでいい?」
「はい」
涼太はレジでお会計を済ませて機械からコーヒーを注いだ。一つを真宙に渡す。
このコンビニのイートインスペースは広くて新しい。白い壁に白いテーブルが置かれていてカウンター席もある。涼太は二人掛けのテーブル席に腰かけた。真宙は向かい側に浅く座って身を乗り出した。
「先輩、好きな人とかいるんですか?」
涼太は特にいない。可愛いと思う女子はいるが恋心とは違う気がする。胸がキュンとするような思いはまだしたことがない。
「いないよ」
「じゃあ、繰り返し言うけど、僕と付き合ってみてくださいよ。僕、料理とか得意なんですよ。涼太先輩のために学校で食べるお弁当作ります。あの、先輩朝練があるでしょう。僕、部活をやっていないんで時間があります。朝練の前に駅で渡しますよ」
同じ学校なら朝練の後でもいいと思うんだが、朝練の前と言ってくれるのは人目を気にしてくれているのだろうか。お弁当か。涼太はいつも学食だ。お母さんがパートに出ているのでお弁当は作って貰えない。でも男の子にお弁当を作って貰ったらクラスの子に何を言われるか分からない。
「嬉しいけど、僕は学食でいいんだ」
「そうなんですか」
真宙は目に見えて気落ちした。涼太はどうしようか困った。
「そうだ、外で会うときならいいよ。真宙くんが作ったお弁当が食べてみたい」
真宙は顔をあげて満面に笑む。
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