1824人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「お前のことが好きだって言ってんだよ!いい加減気付けよ!」
一ノ瀬慎は、抑えきれない憤りをそのままに声を荒げた。
怒っているのかそれとも悲しいのか、自分でもよくわからない。
色々な感情が入り混じっていて、言葉だけでこの感情の全てを伝えることは不可能な様に思われた。慎はそのまま口を継ぐんでしまった。
相手は、そんな慎の様子を凝視していた。
驚きで、動けない。しばらく何も言えずに、ただ慎を見つめていた。どのくらいそうしていたのだろう。彼女はそれきり俯いてしまった慎を見て、やがて全てを悟り・・そして表情を曇らせたのだった。
2人の間に言葉は無かった。しかし慎もまた、彼女の表情をみて全てを悟った。
自分は生まれて初めて恋をして、
そしてそれを失うということを。
最初のコメントを投稿しよう!