いくつもの涙の後に【差分】

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「付き合ってる百瀬くんが恥ずかしく思わないように、イメチェンしたんだ。似合うかな?」 「……見違えたよ」  やがて教室は人が増え始め、皆口々に智樹を褒めた。 「イカしてるぜ!」 「カッコいい!」 「やればできるじゃん!」  そこで、ふと茉以は不安になった。 (片岡くん、カッコ良くなったから皆にモテて、田宮くんみたいになっちゃうんじゃ……)  しかし、それは思い過ごしだった。  わいわいと騒ぐ中から抜け出し、真っ直ぐ茉以の元へとやって来たのだ。 「これ、俺の好きな本なんだけど、読んでみない? 感想を交換できたら、嬉しいな」 「難しそう」 「短編集だから、苦にならないと思うよ」  智樹は、相変わらずの智樹だった。
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