いくつもの涙の後に【差分】

29/34
前へ
/34ページ
次へ
「部屋を丸ごと寝室にするなんて、贅沢~」  僕の部屋、ベッドもデスクも一緒だよ、などとはしゃぐ茉以。  だがそれは、無理にそうしているかのようだった。  そんな彼の姿に心を傷めながら、智樹はベッドに掛けた。  すぐに茉以も、隣にやってきて座った。  二人で肩を寄せ合い、ぼんやり空(くう)を眺める。  これだけで心安らぐのに、人はどうしてその身体まで求め合うのだろう。  ぽつりと、茉以が言った。 「ね、智樹。僕を清めてくれる?」  やっぱり。  智樹は、確信した。  茉以は、田宮に犯されたんだ。 「智樹じゃなきゃ、ダメなんだ」  茉以は、田宮との関係を匂わせながらも、智樹を信頼していた。  大丈夫、彼は僕を愛してくれる。  そんな確信を持っていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加