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器量が非常に悪いと、殊に見た目を重視される女は、生まれながらにして差別される。当然だけど容姿について褒められることはない。その代わり皆に馬鹿にされ、罵られる。親ですら顔が長いから馬面だの鼻が低いからお平顔だの目が離れてるからヒラメ顔だのと酷評して薄笑いを浮かべるのだ。
こんな天分だから、こんな運命だから自分が悪いんじゃない!醜く生んだ親が悪いんだ!元はと言えば差別的な人間全体が悪いんだ!と思っても始まらない。ところが、そんな私でも貰い手があって嫁に行けることになったのだが、夫が自分も不細工なくせに目糞鼻糞を笑うで私のことを嘲笑って貶して毎日のように屈辱を味あわせる。
こないだなんか畑仕事から帰ってきたら、「カラス、お帰り!」と扱きやがった。それと言うのが一日中晴れてて真っ黒に日焼けした所為だ。
で、仕事中、そのことを思い返すたびに腸が煮えくり返り、とことん惨めになり、積もりに積もった屈辱が弾けて、「酷いわ!酷いわ!」と泣き喚いていると、何の前触れもなく黒い三角帽を被り、黒いマントを纏った老婆が飄々とやって来た。
「何を泣いておるのじゃ」
「えっ、あ、あなたは!」
「そう、見ての通り魔女じゃ!それも黒いのを纏っておるが、白魔女じゃ。じゃから役に立てるかもしれんで泣いてる訳を言ってみなされ!」
そう言われて私が正直に惨状を吐露すると、魔女は言った。
「そうか、可哀そうじゃの。ではこんな野良仕事はおっぽり出してわしの家に来るが良い。薬をやるから」
「薬ってそれはどんな効能があるのでしょうか?」
「醜い女程、美しく見えるようになる薬じゃ」
その言葉に私はマタタビをちらつかされた猫のように妙に惹かれて魔女について行くことにした。
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