妹の思い

3/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
私の名前は『一紗(かずさ)』、高校の頃は女子テニス部に所属していて、大学に進学した今でもテニスサークルに入ってテニスを続けている。 高校3年生の時には、全国高等学校テニス選手権大会インターハイ女子シングルスの全国大会で優勝した経験がある。 今の私は大学2年生で、全日本テニス選手権大会女子シングルスに出場するために、毎日自分自身をいじめつくして過酷な練習を続けていた。 私には双子の妹の『彩楓(あやか)』がいて、彩楓も私と同じ高校でテニスをしていて、大学も私と同じ大学に進学して今でもテニスを続けている。 彩楓はどちらかというと勝気な性格ではなく、優しくて思いやりがあり、笑顔がとてもかわいい女の子だ。 大学は地元静岡県内の大学で、彩楓と私は電車で通学している。 彩楓は高校のテニス部の活動も大学のテニスサークルの活動も、毎日休むことなくまじめに練習に参加しているけれど、彩楓はテニスを趣味と考えているようでテニスを極めようという気持ちはないようだ。 けれど私は、もし彩楓が真剣にテニスに取り組んだら、きっと強い選手になるだろうと思っていた。 それは彩楓のテニスはとてもセンスが良いと感じさせられる場面を、よく見かけることがあるからだ。 高校3年生の頃私が彩楓に、 「彩楓はもう少し練習頑張れば、全国大会で優勝するのは夢ではないと思うけどね!」 と言うと彩楓は、 「そんなの無理だよ!  お姉ちゃんにはかなわないよ!」 と遠慮がちな発言をする。 でも彩楓は、テニスサークルの練習は毎日真面目に取り組んで、そつなくこなしていてテニスを楽しんでいるように見える。 そんな彩楓を見て私は彩楓には彩楓の考え方があるから彩楓の意思を尊重しようと思って、大学に入ってからはテニスの練習について彩楓にとやかく言うことはやめていた。 そんなある日、彩楓と私は大学のテニスサークルでの練習を終えて一緒に帰ったが、その時思いがけない事故に遭遇した。 大学の最寄り駅に向かって彩楓と並んで歩道を歩いている途中ビルの建設現場に差し掛かったが、私は上のほうで鉄のようなものがぶつかる音が聞こえて上を向くと、鉄骨らしき物体が私達の頭上に落ちてきていることに気が付いた。 彩楓も頭上の音に気が付いたようで何事が起ったのかと上を向いていたけれど、車道側にいた私はとっさに歩道の内側に向かって思いきり彩楓を突き飛ばした。 その後私は、頭上から落ちてきた鉄骨の直撃を受けてその場にうつぶせに倒れ込んでしまった。 私は背中にものすごい激痛があって、突き飛ばして倒れた彩楓が起き上がろうとしているところが私の目に入ってきたけれど、そのうち目の前に白い霧のようなもやが立ち込めてその後のことは覚えていない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!