新谷坂山のヤッバイ封印

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実は、僕とナナオさんは、4月の間も深夜に2度ほどでかけている。 首狩りライダーの出るといううわさの新谷坂山の峠道と、人体模型が動くはずの深夜の理科室。 深夜の理科室までくるとさすがに半分冗談で、本当に人体模型が動いていたら怖いより面白い。 どっちも、懐中電灯を持ってしばらくうろついたあとに、 「なんもなかったね」 と言って笑って家路についた。肝は試されたけど、何もない。そんな平和な夜の散歩。冒険は、なんだか楽しい。 でも今回の冒険はちょっと大がかりだ。 新谷坂神社は、新谷坂山の山頂を少し下ったところにある。 ハイキングコースから別れた参道から登っても多分片道2時間くらい、真っ暗だろうからもっと時間がかかるかも。 大人だったら側道を通って車で山頂にすぐ着くんだろうけど、僕らは高校生で、遠足でも上ったハイキングコースから参道に入るしかないと思う。 だから多分、一泊コースだ。美人の同級生と一泊。でも全然ドキドキしない、なんだこれ。 まぁナナオさんだし、恋の絵馬を掛けにいく付き添いだもんな。 懐中電灯とか、おかしとか、念のための折りたたみ傘とか、遠足の時と、父さんと昔一泊キャンプに行った時のことを思い出して荷物をリュックにつめる。スポーツブランドのロゴの入った、カッコいいけどたくさん入る四角いやつ。防水のすぐれもの。それからネットで調べて、念のため野犬除けに防犯スプレーも持った。万一に備えて。 それから、寮にも外泊届も出さないといけない。今回は父さんに会いに行く、ということにしようかな。ナナオさんは地元民だから夜中に家から抜け出すんだろうけど、大丈夫なんだろうか。 そんなことを思いながら、とうとう当日の夜が来た。
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