新谷坂山のヤッバイ封印

6/6
前へ
/52ページ
次へ
19時。僕は指定されたハイキングコースの入り口で、ナナオさんを待っている。昼と夜の顔はだいぶん違って、昼は明るく太陽に照らされ人でにぎわっていたコース入り口の看板も、外灯に照らされてその凹凸やひび割れが寂しく浮かび上がり、なんだか少しおどろおどろしく思えた。 それほどまたずに、ナナオさんは携帯のライトを光らせながら、驚くほどの軽装でやってきた。 「だって大きな荷物とかもってくと親にばれるしー?」 スキニージーンズの上に膝丈までのグレーのロンT、それに薄手だけど膝下くらいまである白くて長いニットカーディガン。それから薄黄色のキャップ。メモ帳と財布と携帯がギリギリ入る小さなチェーンのバッグを肩からかけている。 街に遊びに行くならともかく、正直、あんまりハイキングに向かない服だ。カーディガンとか木の枝が引っ掛かりそう。 「すぐに願いがかなって、降りてくるときバッタリあえたら困るじゃんか」 ナナオさんはニカッと笑う。まあ、たしかにかわいいとは思うけど、ここで言い合っていてもらちがあかない。 僕たちは真っ暗な新谷坂山を見上げ、登り始めることにした。 次話【アンハッピー・ピクニック】
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加