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「ここはもう神社のすぐそばだから、神社の封印が守ってくれたのかもね」
「神社の封印?」
少しの沈黙。
「……なんでキョトンとしてるんだよ!? ナナオさんが教えてくれたんでしょ!?」
「お、おう、そうだった。」
ナナオさんは僕の勢いにびっくりしている。
僕は誘われた理由を忘れられててびっくりだ。
とりあえず、一息つこう、と水筒の水をナナオさんにすすめる。
「ありがとな、そんでどうする?」
「うーん、ここが安全なら、少なくとも朝までは神社にいた方がいいかな。真っ暗な帰り道で襲われたらどうしようもなさそうだし、第一迷いそうだもの」
山で迷う一番の原因は、闇雲に下ることだ。
登り道は最終的には頂上に向かってるけど、降りる時はどの方位にも降りられるわけで、道があっても迷う。いつのまにか獣道が途絶えてて、どこにいるかわからなくなることも多いらしい。月は明るいけれど、下れば間に林がある。迷うかもしれない。
明るくなって下りれば、新谷坂山はハイキングコースだから、人にも会えるし、遠足でも来たから大丈夫だと思う。
「……あの子、なんで泣いてたのかな」
気遣うような声音の、ナナオさんの驚愕の発言。ナナオさん……襲われたばかりなのに……。
「ナナオさんを襲ってきたならおなか空いてたんじゃないの?」
「うーん、そんな感じじゃなくて、最初はすごい悲しそうな声だった。子どもが泣いてるのって、ほっとけないじゃん?」
ナナオさんは困ったように眉を下げて僕を見るけど、さっきの口だけ女の話からは、そんな想像は難しい。
「でも、結局襲われたんでしょう? どうしようもないんじゃないのかな」
ううん、とナナオさんは腕を組んで暗い森のほうを見つめた。
僕はだんだん、なんだか嫌な予感がしてきた
「そうだ、ここが安全なら、ここから呼びかけちゃだめかな」
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