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「あ、うん、ちょっとびっくりしちゃったけど、……大丈夫かな」
ナナオさんは安心させるように優しい声で話しかけるけど、大丈夫というのは嘘だ。ナナオさんは無意識だろうけど、さっきから僕の手をすごい力で握りしめている。
「よかった……ごめんなさい、私、動いているものを見ると何がなんだかわかんなくなっちゃうの。だから、お姉さんもこっちに近づかないでね」
「……オッケーオッケー。この距離なら大丈夫かな」
「うん、見えないと大丈夫だし、私そっちに近づけないから」
「そっかそっか、よかった」
ナナオさんはほっと息をつく。僕の手を握っていたのに気がついて、慌てて手を離す。
僕らはやわらかな暗闇を挟んで会話を続けることにした。
「それで、なんで泣いてたのかな、よかったら、お姉さんに相談してみない? 解決はできないかもだけどさ、気持ちは楽になるかもよ」
「気持ち……」
少しの時間があり、闇は話始める。
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