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地神の暇つぶし
少し、飽いていた。
いや、飽いていたのとも少し違う。
なんだか、この役目が意味がないもののように思われたのだ。
我は長い年月、この新谷坂山で悪しきものの封印を守ってきた。
彼の方は我をそのように造られたし、封印こそが我が役目である。そこには何の不満もない。
彼の方は遠い昔、この場所にさまざまな怪異が集まり不幸の温床となったとき、それを憂いて命と引き換えに怪異を閉じ込め、封印された。
我はその封印のふたである。腹の下にうごめく怪異がどのようなものかは詳しくは知らぬが、我はその上に座し、長い年月この土地やそこで暮らす者を見ていた。
彼の方のいいつけなのか、時おり近く住む人間が供え物など持ってくることがあった。そんなものはなくてもよいし、祈りをささげられてもただの封印のふたである我には意味はない。特に豊作や安産を祈られても我にはどうしようもない。ただたまに、悪いものを払ってほしいという願いについては、彼の方がこの地の安寧を願っていたのもあるゆえ、気が向くままに足を運び、とらえて穴から封印に投げ入れた。人は移り変わり、時には村ごと滅ぶこともあったが、我は特に何を思うこともなく、封印のおもしであり続けた。
状況が少しかわったのは今から100年ほど前だろうか。
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