口だけ女と夜食をともに

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口だけ女と夜食をともに

さて、封印を調べると言ってもどうしていいのか見当もつかないや。 ナナオさんは、とりあえず石碑とかないかなってつぶやいて、一緒に境内をうろうろ動き回ったけど、石碑どころか何かが書かれたもの自体が何もなかった。普通、神社のいわれとかって入り口とかに書いてあるものだよね。事前に調べた、伝承が喪失したってこういうことなのかなって思う。 僕が調べたことは当然ナナオさんは調査済ってことだろうし、これ以上できることはないように思われた。 「手がかり、何もないね」 「うーん、ないなぁ。絵馬とかにヒントがあったりしないかなぁ?」 絵馬掛所の絵馬も片っ端からのぞいてみたけど、8割がたの恋の絵馬と2割がたの普通のお祈り絵馬が奉納されているだけで、ヒントのようなものはなかった。 社務所は鍵がかかっていて、無理にゆすると扉を壊しそうだったのであきらめた。薄く曇った窓ガラスから懐中電灯を照らしててみても、もの自体があまりない。空っぽのスチールラックと簡易の机と椅子くらい。 本殿の方ものぞいてみたけど、神殿が作られていて(さかき)やお神酒がささげられ、神鏡(しんきょう)御幣(ごへい)、大麻(ふさふさした白いやつ)や灯明なんかはあったけど、他のものは何もなかった。最低限のものだけお祀りしてある感じでヒントになるものってなにもなさそう。 そもそも普段は誰もいないだろうから、貴重な資料とか置いてたらかえって危険だよね。盗難とか考えたら。
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