高校1年、デビュー失敗

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僕はもともとは、新谷坂町のある神津(こうづ)市の東隣の三春夜(みはるや)市に暮らしていたんだけど、春休みに僕だけ神津市に引っ越してきた。 僕の両親は転勤が多い。中学3年から高校1年に上がる春に、二人とも別々の場所への転勤が決まった。そのあとも転勤が続くようだ。これまでも転校人生だったので、せっかくだからひとところに落ち着きたいな、友達もほしいな、と思った。そう親に言うと、子どもっぽくないな、と笑われた。 両親と相談して神津市の寮制の高校の説明会にいった。自由な校風に寮での規律ある暮らし。忙しくて僕の面倒をみるのが大変だった両親を説得するには十分な条件。 受験して、合格した。新しい生活にはちょっとだけ希望があふれてた。 ところが新谷坂高校に入学してからも、結局僕の生活はぱっとしなかった。ようは、高校デビューに失敗したんだ。転校続きで継戦的コミュ力が低かったんだと思う。人間関係って、難しい。 新谷坂高校は寮制の高校だから地元の子は少ないと思っていたんだけど、独特な校風のためか半分くらいは地元の子だった。地元の子は地元の子ですでにグループができていて、転入組もなんとなく自然とグループができあがっていく。僕はというとその流れになんとなく乗り遅れ、気が付いた時は、すでにポツンと一人だった。 正直、自己紹介のときのアレも悪かったんだと思う。
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