口だけ女と夜食をともに

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もう時刻は午前2時。正直寒い。 石畳に座っていると、冷気があがってきてちょっと冷える。上着はナナオさんに貸してしまったし、と思って僕は簡易クッキングセットをリュックから引っ張り出す。僕の父さんは多趣味な人で、二人でキャンプにいったことを思い出す。 小さなガスバーナーとコッヘルのセットとドリッパー、それにインスタントラーメンにインスタントコーヒー。コッヘルっていうのはキャンプ用品で、マトリョーシカみたいにいくつもの皿替わりにもなる軽量鍋が組み合わさって入ってる。僕はバーナーに火をつけて、一番大きい鍋、といっても手鍋サイズだけど、に水筒から水をいれてお湯を沸かす。お湯の一部はドリッパーでコーヒーを作って、残りはそのままラーメンを作る。 「ボッチーすげえ。なんでこんなもんもってきたん」 「えぇ? だってどう考えたって一泊ルートじゃない。徹夜だと夜食は必要じゃない?」 さすがに山の上の真っ暗な神社でのんきに寝てらんないでしょ。野犬も出るって話だったし。 ナナオさんは森の奥の暗闇を見つめる。 「あの子は一緒に食べらんないよな」 「さすがにラーメンだからなぁ。お菓子ならあるよ」 僕はクッキーの袋をナナオさんに渡す。 ナナオさんは、おーい受け取って、と暗闇に声をかけてクッキーの袋を投げ入れる。 パサっという袋が落下した音がした場所に、ガサガサと何かが移動する音がする。 「それ、クッキー。おいしいから、開けて食べて」 ありがとう、と小さい声がした。 僕たちは、暗闇を挟んで夜食を食べながら話し合いを再開した。
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