口だけ女と夜食をともに

5/6
前へ
/52ページ
次へ
僕はハフハフとラーメンをすするナナオさんにいれたてのコーヒーを渡しながら考える。 女の子とお母さんは一緒に封印に入って、同じ封印の中にいて、女の子はふもとから出て来た。お母さんは山の上のここにいる。 あれ? 『……新谷坂(にやさか)山はいい山で、昔えらい人が超悪いのをたくさん封印して……』 というナナオさんの言葉を聞いて、僕は新谷坂山は霊山なのかなって思った。 ひょっとして、山全体が封印で、ふもとも神社も含めた山全体で『わるいもの』を封印しているんだろうか。 『トンネルを掘る話』があって、進めてたらなんかよくわかんないけど『わるいこと』が起こった。 そうすると、山全体が封印で、山を掘ったら封印に行きつく……? なんだかすごく規模が大きくなってきたな。 僕はその仮説をナナオさんに話す。僕らに山を掘るなんてできない。それに、そもそも僕らは封印を開放したいんじゃなくて、手紙とか何かつなぎをつけたいと思っているだけだ。 ちょっともう手におえるレベルじゃないと思う。女の子にもそう告げようと思ったとき。 ナナオさんはパチっと指で音をならした。 「ナイス、ボッチー! やるじゃん!」 え、今の話のどこにそんな前向きになる余地があるの。スコップとか持ってきてないよ。 「ようするにさ、山の地面の中に封印があるわけだろ? 地面の中に入ればいいわけだよな」 そういって、ナナオさんが指さしたのは、境内の井戸だった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加